「ねえ、島崎先生と沼田先生が結婚をするんですつて。すてきだわ。爆彈で――オシドリで――殺人罪で――散文的幸福で――あたし、感激しちやつた」
和子は穉 い顏に興奮の血を上せて、なぞめいたことを口走つた。
六助と新子は、爆 かれたように身體を起して、目を見合せた。
「そう。……そうだつたの」
新子は、自分が受けたシヨツクを、一人では支えきれないもののように、六助の肩先に手をかけた。
疊にねそべつて、このごろポケットに詰めこんでいる聖書を拾い讀みしていた富永は、ふと聲をあげてその一節を讀み出した。
「――かかる故 に人は父母を離れ、その妻に合ひて、二人のもの一體となるべし。はや、二人にはあらず、一體なり。この故に神の合せ給ひしものは人これを離すべからず――」
大地には夜の雨がシトシトと降りそそぎ、室の中には、燒グリの香ばしい匂いがプンと漂つていた。
石坂洋次郎『青い山脈』(1947)のラストシーンである。
物語は6月のある晴れた日曜日の午前から始まるから、地方の村で起きたひと夏の騒動を描いた話ということになる。そして迎える、みのりの秋。
私はこの時期になると1971年の夏に読んだこの小説のことが毎度思い出される。
ラスト1行の、なんとエロいことか!
これぞ青春文学である。
映画になった『青い山脈』はこうしたニュアンスがあえて無視されていて、いささか情趣に欠けていた。当時の映像表現の限界もあったろうが、その後のリメイクもなぜか踏襲して形骸化してしまった。
青い山脈 – 北朝鮮版
梶 光夫 – 青い山脈
松竹テレビ映画『青い山脈』主題歌。
小説の舞台設定は東北の港町ということになっている。しかし描かれる世界はどちらかというと農村に近いイメージだ。
昭和20年の農村の秋は、それはもう静かだったろうと思う。警報が鳴ることもなく、勤労動員も竹槍訓練もない。
疎開児童らは帰り始めるし、買いだしに来る都市生活者との物々交換は圧倒的に売り手有利。なんといっても自分で食糧を調達できる人間が一番強かったのである。
敗戦後まず様変わりしたのは教育だった。戦前の国体カルトが断罪され、民主主義や多数決が教室まで乗り込んできた。そして農地解放。
共産主義・社会主義方面が農村に入りだしたのは、だいたい昭和20年代も終わりに近くなったころじゃないだろうか。いきなり「イデオロギー」ではなく、集団農業の経営システムを持ち込む形で根を下ろし始めた。
小林幸子 – 出稼ぎ父ちゃんの歌(1966/02/05)
作詞:西沢 爽、作曲:山本丈晴、編曲:伊藤祐春
昭和30年代前半、都市では投資ブーム(マネービル)が起きるものの、農村にはほとんど影響を与えなかった。そのかわり農閑期の出稼ぎが当たり前のようになり、次男坊・三男坊が自身の投機性を自覚してか 都会へ出て行くようになった。
東京五輪のころになると土地ブームが農村まで波及し、土地を売った農家がアパート経営に乗り出したりする。
暮らしが向上するに連れますます現金収入が重要となった昭和40年代は「後継者不足」と「三ちゃん農業」の時代。
このころどういうわけか、米が余り出すのである。ごはんを食べる回数が減ったことも大いに影響したはずだ。
作り過ぎ(生産過剰)で古米・古々米が倉庫に積み上げられるに及んで、自民党はついに米の生産調整政策を断行する。当初は一時的なものと誰しも思っていたが、以降、拡大・強化の一途をたどった。
農村は閉鎖的だとよく昔から云われる。だがそれはどうだろう。
都会にある工場や会社ビルの各階フロア、社員の家族が住む社宅などが、比較的狭い地域に平面的に展開されたようなものであって、人間関係のややこしさは実は余り大差ないのではないか、と私は思う。
都会には逃げ場や隠れ場所がいくらでもあるけれども、農村にはそれがない ということくらいだろう。
農村の過疎化、農業人口の減少に歯止めが掛からないとはいえ、生産者のパイは少しは膨らんだはずだ。機械化で作業効率も高まっている。高いクオリティの生産物を独自ルートで売る試みもかなり
小説『青い山脈』に登場した人物がもし実在したとしても、平成25年の現在、9割以上は亡くなってると考えられる。それほどの時間が過ぎてしまった。
村は今どうなっているか。大型家電量販店、大型スーパー、コンビニなどが出来ているだろうか。ふた世代分くらい経過しているからきっと孫の時代に違いない。
ジャズピアノの調べ ~古き良き日本の唄~【里の秋】
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lovelyhulaboy – 里の秋 ウクレレソロ
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