
『フランシーヌの場合』 作詞:いまいずみあきら、作曲:郷伍郎、編曲:テディ池谷 歌:新谷のり子、古賀力 発売:1969年5月、日本コロムビア。
毎年3月30日になると、この歌を思い出します。
この歌についての一番適切な解説であろうと思われる、当時のシングル盤歌詞カード表2にあるプロフィールと曲紹介を引用しておきましょう。
新谷 のり子
昭和24年10月3日、函館市日吉野37に生れる。函館商業高校卒業後、歌の勉強のため上京、三佳令二氏に師事、かたわら虎の門”ミュージックラウンジしんくら”のシンガーとして活躍中、作曲家郷伍郎氏に見出され、同氏の作曲になる”フランシーヌの場合”をデノンレコードより発売される事になりました。フランシーヌの場合
3月30日の朝、パリのベトナム和平拡大会議場からわずか200メートルの路上で、フランシーヌルコントと云う若い女性が焼身自殺しました。
彼女はビアフラの独立をめぐって泥沼の戦いが続く、ナイジェリア内戦の新聞の切り抜きを持っており、ビアフラの飢餓と悲惨な現状を憂えた死の抗議でした。「フランシーヌの場合」はこの事件を知った作曲家、郷伍郎氏と作詩のいまいずみあきら氏がすぐさまその感動をフォークソングとして書き上げたものです。
美しく覚えやすいメロディーと弾き語り風のギターが、この曲にこめられた純粋性を見事に表現しています。
特にバックに流れるフランシーヌ事件を報じるニュースとシャンソン歌手、古賀力のフランス語の唄が独創的なフォークソングとして注目されています。
フランス人女性が政治的な主張と抗議をするために衆人環視の中での自殺、それも焼身自殺を択んだというのは大変ショッキングな出来事です。
ベトナム人僧侶ティック・クアン・ドクがサイゴンのアメリカ大使館前で抗議の焼身自殺(1963年6月11日)をしている映像が世界中で流され、それに対してゴ・ディン・ヌー秘密警察長官の妻マダム・ヌーが「あんなものは単なる人間バーベキューだ」とテレビで語った、そのことをおそらくは踏まえての仕儀であったと考えられます。
Vietnam Burning Monk(1963)
詳しい経緯が不明なので、その「理由」が自殺をするために必要だった「大義名分」であった疑いも拭いきれず、ために彼女が反戦平和運動の聖女に祭り上げられることもなく、今にちに至ってます。この歌がなければ恐らく日本では忘れ去られていた事件だったでしょう。
実際に起きた事件を歌にしている点では、ブロードサイド・バラッド、ニュース歌謡の範疇に入れても私は間違いではないと思っています。
- 君はフランシーヌ・ルコントを知っているか 裏・21世紀の歩き方大研究
- フランシーヌの場合 二木紘三のうた物語
- ティック・クアン・ドック – Wikipedia
- ゴ・ディン・ジエム – Wikipedia
当時、テレビの歌番組で、レコードで共演している古賀力も呼ばれてレコードどおりに歌っているのを見た覚えがあります。
フォークがすっかり市民権を得て、レコード会社も積極的にリリースしていた時期でして、楽曲的に良くできているこの歌はかなりヒットしました。
「あまりにもおばかさん」「ホントのことを言ったら」というようなフレーズが左翼運動とか、反戦、反政府運動といったレベルを超えて、人間としての生き方のレベルでの感想を伝えているように感じられて、違う世代にも受け容れられたのでしょう。
新谷はヒット曲を持ちながら新左翼に近い位置にいる(いた?)女性歌手ということでイメージ的には加藤登紀子に連なるところがあります。現在も積極的に反戦・人権擁護・平和を訴えられているようですね。
(上左)シングル『さよならの総括』c/w『雨降る20世紀』新谷のり子 1969年10月 日本コロムビア
AB両面ともに作詞:山上路夫、作曲:田辺信一、編曲:小谷 充。
(上右)シングル『娘たちは風にむかって』c/w『あたらしい旅』新谷のり子 1972年 日本フォノグラム フィリップス
A面は映画『娘たちは風にむかって』主題歌、B面は同挿入歌。AB両面ともに作詞:土居大助、作曲:いずみ・たく、編曲:親泊正昇。
1972年6月12日に初公開された『娘たちは風にむかって』という映画は左翼系の独立プロ作品(製作:共同映画全国系列会議、民藝映画社/配給:ほるぷ映画)で、内容も1966(昭和41)年に大阪・西淀川にある被服工場で実際に起こった労働争議をモデルにしたものだそうです。
新谷のり子は1972年当時、フィリップス・レーベルに移籍していて、『フランシーヌの場合』も再録音しています。この時のアレンジャーは大柿隆で、意外性のあるコードを使って、オヤッと思わせる仕上がりになってました。
- ほんとのことを言ったら あまりにも悲しい more register movement
- 明日はチェニスかモロッコか more register movement
- 警報の報すは何(なん)ぞ二月尽 more register movement
- お名前ソング、追悼ソング (1) more register movement
(2012年3月30日)
追加記事
プルトニウムの場合
原発事故関連の替え歌はほかにも幾つかあるようです。
詞が秀逸であるもの、歌い方をオリジナルに似せてるもの等々、いろいろあってそれなりに面白い。
(2012年3月30日)


