天使のハンマー

Debbie Reynolds – If I Had A Hammer

デビー・レイノルズ(Debbie Reynolds)が『天使のハンマー(If I Had A Hammer)』を歌ってる映像をYouTubeで見ました。
せっかくのプロテスト・ソングがゴージャス、メロウ、ジャズィなハリウッド式アレンジで通俗化されてるだけでなく、保守的な白人の大人でも違和感なく聞けるくらいにすっかり漂白され無毒化されちゃっている・・・、いわゆる”Soft, Safe & Sanitized”ってやつです。
もちろんデビー・レイノルズが悪いわけじゃないんですが、滑稽なまでにスノッブで、
あたしゃ見ていてどうも居心地が悪い。
当時、世代間のギャップがいかに大きかったか が、よく分かる映像です。

ラテンロック風アレンジでヒットさせたトリニ・ロペスも人気者となった後では、やはり似たようなことになってますね。
メッセージ性の高い歌が大衆化、通俗化されて、いともたやすく骨抜きにされる・・・
これも60年代の一断面には違いないでしょう。

Vikki Carr & Trini Lopez – If I Had A Hammer

  ※(追記:この動画は削除されました

 

Trini Lopez – If I Had A Hammer(1963/07)
produced by Don Costa

Originally recorded in 1950 by The Weavers as “The Hammer Song,” this Pete Seeger-Lee Hays folk tune was a hit for Peter Paul & Mary (see the 1962 Hits Archive) and for Trini Lopez in this’live’ recording from PJ”s nightclub in West Hollywood.

Trini Lopez – If I Had A Hammer(TV live)

以下の音と映像は、フォークソングからモダンフォークへの橋渡しとなったフーテナニー(フォークソングを歌手と観客が一緒に歌うような催し。フォーク・ジャンボリー)の雰囲気をよく伝えています。

Pete Seeger – If I Had A Hammer(1956)

ピート・シーガーの歌いっぷりはかなり素朴ですね。田舎の気のいいおじさんといった風情です。
作者必ずしも最適なる表現者に非ずといったところでしょうか。

The Weavers – The Hammer Song(1950)

LP「HOOTENANNY TONIGHT !」

(上)FOLKWAYレコードのオムニバスLP『HOOTENANNY TONIGHT !』1959年。歌詞カードが入っていてピート・シーガーが一文を寄せています。
このLP、ジャケットのローカルな雰囲気もさることながら、白人の若い男女が黒人とにこやかに話しているイラストが注目されます。フーテナニーのお客はほとんどが白人でしたが出演者では黒人も珍しくはなかったようです。そのへんが差別撤廃運動へと結びつく“下地”となったのかもしれません。

<参考>
The Glencoves – Hootenanny(1963/05)
conducted by Al Ham
フーテナニーそのものをテーマにした歌。

Pop Chart Peaks: Music Vendor 34, Billboard 38, Cash Box 39
Label note states that this was recorded live in the student lounge at Fink University.

トラディショナル・ソングやフォーク・ソングは1953、4年ごろから、ちょうどロックンロールの流行と並行するように、徐々に若者たちに浸透していきました。中にはボブ・ディランのようにロックンロールもフォークも両方好きだという若者も少なからずいたことでしょう。
同じころイギリスではスキッフル・ブームが始まっていましたし、日本でもうたごえ喫茶や民謡酒場が流行り、その一方で(1957年暮から)ロカビリーが人気となっていました。米・英・日で同じようなことが起きていたわけです。
ニューヨークやサンフランシスコなどの都会では、やがてフォーク・ソングを専門に聴かせるカフェが出現し、モダン・フォークの揺籃(ゆりかご)となりました。
素朴でおとなしいムードだったフーテナニーは、数年を経ずして緊張感の漂う公民権運動や反戦の集会に変貌し、より先鋭的なプロテストソングが歌われるようになります。そうした急激な変化が、いかにも“60年代”です。

Peter Paul & Mary – If I Had A Hammer(The Hammer Song) (1962 hit single version)

Written by Pete Seeger and Lee Hays of The Weavers, this folk anthem was the first top-10 single for Peter, Paul & Mary; but it was their second recorded version….a more energetic and passionately-sung track than their comparatively sedate original LP version.

Peter, Paul, and Mary: If I Had A Hammer, Civil Rights March on Washington DC, 1963

Peter, Paul and Mary – If I Had A Hammer
at the Newport Folk Festival on Friday, July 23, 1965.
レコードより強めの発声。不機嫌そうな顔つきのマリー・トラヴァースがクッと顎をシャクるように動かすところがシビれますね。

こちらはTV番組のライブ映像。
リラックスした感じで、ニューポート(1965)の気合いの入り方とかなり違ってるとこが注目されます。
そのたった2年で、つまりワシントン大行進をきっかけとしてアメリカ社会、若者の意識が大きく動いたということでしょう。

Peter, Paul and Mary – If I Had A Hammer(1963 TV performance)

この歌、国籍・人種を超えてアピールしたようで、ソウル、ゴスペル方面も採り上げます。

Laila Kinnunen – If I Had A Hammer
Finland

Sam Cooke – If I Had A Hammer(The Hammer Song)
from the album “Sam Cooke At The Copa”(1964)

Aretha Franklin – If I Had a Hammer(1965/06/17)

Five blind boys of Alabama – If I had a hammer

They won the Grammy Award for Best Traditional Soul Gospel Album every year between 2002 to 2005.

以下、少々イケてないかも…と思われる『天使のハンマー』。

Don Costa and his Orchestra and Chorus – If I Had a Hammer
トリニ・ロペスのバージョンも手がけたイージー・リスニングの大御所。

Garry Blake and his Orchestra – If I Had A Hammer

The Brothers Four – If I Had A Hammer(1963)

Claude François – Si j’avais un marteau(1963)

Bobby Rydell – If I Had A Hammer
from the album “The Top Hits Of 1963″(1964/01)

Johnny B. Great – If I Had A Hammer(1964)
From the 1964 British Beat Film “Just For You”

The Illusions – If I Had A Hammer(1964)

Rita Pavone – Datemi un Martello(1964)
イタリアのリタ・パヴォーネ。
歌詞はティーンの不満を扱った内容になっている。

Rita Pavone – Datemi un Martello
別の映像。

Sonia – Si Tuviera Un Martillo(1964)
スペイン語バージョン。題名は直訳。訳詞の内容は未確認。

雪村いづみもビクターで『天使のハンマー』の日本語版を吹き込んでます。
この方のその後の“回心”を予言してるようなテイクで、私は畠山みどりの『教訓』(加川良のカバー)くらい面白いと思いました。

雪村いづみ – 天使のハンマー

  ※(追記:この動画は削除されました

 

<参考>
Sônia Maria – Se Eu Não Passar De Ano(1965)
ブラジルのポップス。トリニ・ロペス版にインスパイアされた?

Les Surfs – Si j’avais un marteau(TV live, 1966)

The Seekers – If I Had A Hammer
from the album “Introducing The Seekers”(1966)

Ace Cannon – If I Had A Hammer(1969/02)

Wanda Jackson – If I Had A Hammer
from the album “The Many Moods Of Wanda Jackson”(1969)

Albertina Walker And The Caravans – If I Had A Hammer(1969)

Nicky Thomas ‎– If I Had A Hammer(1970)

“World Famous” Coasters – If I Had A Hammer(1976)

 

追加記事

(2016年12月21日)

追加記事

2018/12/19
岩国市の第三セクター「いわくにバス」の●●●●社長(37)が、運転手の態度に関する乗客の苦情メールに対し「ハンマーで殴っていい」と返信していた
(中略)
 情報提供を受けた市は不適切として口頭注意した。市によると、●●社長は「今後は気を付けたい」と応じたという。同社は「コメントできない」としている。
 同社によると、14日にバスの乗客から運転手の態度が不愉快だとメールで苦情があった。●●社長は14日、謝罪の言葉の後に「運転席の近くに点検用のハンマーがあります。それを使って割とマジで、次から殴っていいです」と返信した。

<苦情に「ハンマーで殴っていい」 バス会社社長が返信、山口 – 共同通信 より一部引用>
https://this.kiji.is/447952309610923105

社長、雑すぎるだろ。
(2018年12月19日)

天使のハンマー」への0件のフィードバック

  1. 板倉弘志

    私は昭和42年生まれなのでフォーク世代の一つ下のニューミュージック世代です。
    中学の授業ではすでに教科書にはPP&Mのパフが載っていました。カリキュラムですでに
    フォークソングが組み込まれていました。小六で五つの赤い風船がでていましたし。
    で、パフですが授業で聞かされたのはPP&Mではなくブラザース・フォーというのがミソです。
    天使のハンマーもブラザース・フォーが最初だったのでPP&Mを後に聞いたクチです。
    ブラザース・フォーの歌う「あの素晴らしい愛をもう一度」もイケてません。
    学校で習うときは先生も「モノホン」を授業で紹介してほしいもんですね。

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  2. eiji 投稿作成者

    キングストン・トリオ、ブラザース・フォー、ピーター,ポール&マリーは日本、特に東京の学生にうけたアーチストでしたね。
    3グループの中で一番お行儀がよく、上品で、ハーモニーも美しく、世代に関わりなく人気を得たのはブラフォーでした。彼らはエンタテイナーとしては「一流」、ということになります。
    PP&Mは「社会正義の実現」を訴えるという意味での政治色は出してはいましたが、(アメリカで云うところの)「アウトサイダー」「反体制」ではなく、中庸の美徳を体現して、良識ある市民の支持を得ていました。公民権運動、差別撤廃運動の人たちに支持されたのは彼らです。どちらかというとインテリ受けする人たちですね。70年代後半からは反原発運動に関わりつつもあくまでモダンフォークの「歌手」としてのスタンスを堅持していました。
    60年代後半、米・日・仏などで学生運動の嵐が吹き荒れましたが、その“闘士”たち、なかでも左翼思想をよく知らずに参加したようなノンポリ学生の素朴な正義感に火をつけてしまったのは、やはりディランとそのフォロワーでしょう。それだけ際立っていて、衝撃的だった。
    さらに面白いのはディランがその当時確立したカリスマ性を保持しつつ、今でも「歌手」活動を続けていることですね。その後の音楽的変遷は実はあまり重要ではないのかもしれません。あの人はベビーブーマー(団塊世代)の「共有財産」であり、大きなアイコンであり、ヒーローであり、アイドルであるわけで、もうそれ以外の生き方は許されない立場なのでしょう。
    社会からドロップアウトして放浪したり、コミューンなどで原始共産制みたいな共同生活をしていたビートニク~ヒッピー、その大衆版のフラワーチルドレン(サンデー・ヒッピー、プラスティック・ヒッピー)の音楽的好みはまた別だったようです。

    学校の授業では、教師世代の歌じゃなくて、いま歌いたい歌を生徒自身に選ばせればモチベーションも高まるでしょうにね。
    ちなみに私は超オンチだったので、音楽の授業は苦痛でした(笑)

    返信

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