
『東京の灯よいつまでも』 作詞:藤間哲郎、作曲:佐伯としを、歌:新川二郎(=新川二朗)、発売:1964年、キング。
1964年とその前後には、「東京」の名を冠した商品が世にあふれました。大手アパレルの新作モードでは帝人の『フレッシュ東京』、東レの『モード東京』、化粧品のキャンペーン・テーマでは資生堂の『メークアップ・トーキョー』等々。歌謡曲においては吉永小百合『フレッシュ東京』、西田佐知子『東京ブルース』、ザ・ピーナッツ『ウナ・セラ・ディ東京』、坂本九『サヨナラ東京』など。そして今回採り上げる新川二郎『東京の灯よいつまでも』もその一つでした。
こうした現象は、都市としてのステータスが上がった、世界のTOKYOだ、という自負の表れであり、また単純に東京五輪便乗の動きでもありました。
それにしても新川のこの歌、1964年にしてはいささか古いタイプの曲調です。同じキングなら三橋美智也、他社なら三浦洸一あたりがお似合いの持ち味です。
どこか『道頓堀行進曲』のムードを感じさせるのは、「灯」というキーワードに作曲者が意を用いたからかもしれません。しかしテンポはこっちのほうがずっと遅く、あたかもそれが東京という街のスケール、重みであるかのようです。
私はさまざまなジャンル、いろんなタイプの曲が好きでして、その言わんとするところの是非はともかく、軍歌にも革命歌にも、カルトの愛唱歌にさえ好きな歌がいくつかあります。もちろんシンパでもなんでもないんですが。
好きな歌というのは何かの拍子に頭から離れなくなって、エンドレスのテープのように何度も何度も繰り返されるということがありますよね。この『東京の灯よいつまでも』も、私にとってはそうした歌の一つなんです。いい按配のテンポ、メロディ、伴奏。これが鼻歌にはもってこいでして(笑)
ビクター・東芝の低音、キングの高音というくらいで新川二郎もキーが高く、レコードと同じふうに歌いだすと「きーみーは、どぉしてェー、いるぅー」のとこで、あたしなんぞは声が出なくなる。……まぁ鼻歌ですから、テキトーにごまかしますがネ。
東京讃歌では1948(昭和23)年10月録音、翌49年1月発売の灰田勝彦『東京の屋根の下』が随一でしょう。両者を比較すると、新しいはずの『東京の灯よいつまでも』のほうが、むしろ古い曲のように思えてきます。もちろん終戦直後に「羽田」の「ロビー」で別れる男女はいませんが、そう感じさせるような曲調は、当時、どちらかというと保守的な意識・嗜好を持った大人たちにアピールしたのではないでしょうか。空襲で焼け野原となった帝都東京が一応の復興を成し遂げた、その満足感が作詞、作曲者のマインドにあったものと拝察されます。
二つの曲に共通する東京の地名は唯一「日比谷」だけ。今は日比谷公会堂や日比谷公園大音楽堂でライブをする歌手はいても「日比谷」を歌にする人は見当たりません。
(2009年10月6日)
