自警団の恐怖

移民を巡る社会問題が先鋭化しているイタリアで、違法移民をかくまう市民には禁固刑を科し、自警団による巡回を合法とする治安法が施行された。
(中略)
 イタリアでは戦前のファシスト政権下で、自警団がユダヤ人や共産党員を弾圧する事件が多発した。治安法導入は、むしろ外国人排斥の風潮を助長する恐れが指摘されている。
(中略)
 イタリアには合法滞在の外国人約400万人のほか、約100万人の不法移民がいるが、統計上、犯罪は年々減っている。にもかかわらず、ベルルスコーニ政権は発足当初から「外国人犯罪の増加」に焦点を当て、治安悪化を説いてきた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090724-00000033-mai-int

もちろん自警団の恐怖を味わったことはありません。
でも類推・想像はできます。
フレドリック・ブラウンの多元宇宙ものの傑作SF『発狂した宇宙』(What Mad Universe)の第5章に登場する「夜行団」。あの恐ろしさは自警団のリンチの恐ろしさに通ずるものがあるんじゃないでしょうか。
上掲の記事を読んで、ブラウンのもうひとつの傑作長編『火星人ゴーホーム』(Martians, Go Home)もただちに連想しました。
作中で語られている、文化や思考形態の異なる異星人(エイリアン)への不安・恐怖・怒り・敵意は、実は異邦人(エイリアン)に対する感情と大差ないのではないか、そう考えるとこの作品が移民問題の本質にも触れている、と思えてくるのです。

フレドリック・ブラウン自身はアメリカ生まれですから、ムッソリーニ時代のイタリアの自警団について、体験があったわけではないでしょう。
ただ、似たような話は戦前から戦後の赤狩り時代にユダヤ人排斥という形で米国にもありましたし、当然、南部を中心とする黒人差別、西海岸を中心とした黄禍論についても知ってたはずで、そうした知識・理解が作品に投影されている可能性は大いにあると思います。

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(左)ハヤカワ文庫『発狂した宇宙』訳:稲葉明雄、1979年第6刷
(右)ハヤカワ文庫『火星人ゴーホーム』訳:稲葉明雄 1981年第7刷

追加記事

(2016年10月1日)

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