「総(あら)ゆる人種からなる、十三万人の観衆に包まれた開会式(オオプニングセレモニイ)は、南カルホルニアの晴れ渡った群青(ぐんじょう)の空に、数百羽の白鳩(しろばと)をはなち、その白い影が点々と、碧玻璃(へきはり)のような空に消えて行く頃、炎々(えんえん)と燃えあがった塔上の聖火に、おなじく塔上の聖火に立った七人の喇叭手(らっぱしゅ)が、厳(おごそ)かに吹奏する嚠喨(りゅうりょう)たる喇叭の音、その余韻(よいん)も未だ消えない中、荘重(そうちょう)に聖歌を合唱し始めた、スタンドに立ち並ぶ三千人の白衣の合唱団、その歌声に始まって行ったのでした。」(田中英光)

 一九六八年一月、北ベトナムでの大胆で血生臭いテト攻勢により、無敵アメリカ軍の神話に終止符が打たれ、アメリカ国内も戦争状態にあった。四月、公民権運動の主導者、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが惨殺されたことが引き金 …