きやう文堂あるじ ものまうす

 

主人敬白

ねいねいねい、ヨッ、てやんでぃ、べらぼいッ!
ぬっ、抜きゃぁがったなぁ、キッ斬れるもんなら斬ってみやがれいッ。
ヒヤァあぶねへあぶねへ。
怪しいぜ番頭!うぬは白鼠か黒鼠か!?
おきゃァがれ、おちゃっぴいめ。邪魔なところへ北村大膳(きたむらだいぜん)たァてめえだ。
イヤハヤ、大きに化(ばか)された。
アヽ金といふものはなぜ持てねへだらう、ねえ、ご隠居さん。
ヲット東西、東西。

てめへ等(ら)もちっと性根魂(しょうねだま)を磨きやがれ。天明年中(てんめいじぶん)の狂哥に
「磨(みがい)たら磨ただけにひかるなり。性根魂でも何の玉でも、トいふ狂哥があった

あの哥(うた)の返しに相応な哥をよみやした。読人はしりやせんが、
睾丸(きんたま)は磨たとても光りなし。こんにゃく玉と屁玉(へだま)人だま…ス
能(いい)返哥だネ。狂哥といふものはおそらく江戸にとゞまったネ。

よせ。最う倦(あき)た。
十返舎一九辞世
「此世(このよ)をば どりゃお暇(いとま)せん香の 煙と共に 灰(はい)左様なら

ヲットしんでたまるけえ、東西、東西!

陋巷の一貧民蔦屋狂文堂あるじ 敬白      

 

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