私のころは「仰げば尊し」「蛍の光」しか無かった
学生も社会人も、2月を過ぎると出会いと別れのシーズンが到来。毎年数多くの「卒業ソング」が生まれますが、今年はとくに名曲ぞろい!
『卒業の日』サスケ
『振り向けば…/Destination』Janne Da Arc
『Dear/旅立ちの日に・・・』川嶋あい
『ソツギョウ』加藤ミリヤ
『桜色』竹井詩織里
『桜』コブクロ
『卒業〜さよならは言えない〜』安次嶺奈菜子
http://magazine.music.yahoo.co.jp/rep/20060215_001/
「クリスマス」とともに今やヒットソングの定番テーマとなりつつある春の「卒業」。
ちょうどいい機会なので、自分にとっての「卒業ソング」は何だろうと、考えてみました。
映画『高校三年生』(大映)でも重要なテーマとして描かれてましたが、進学する人と就職する人の“心理的な別れ”というのがありまして、卒業より前のその別れが、社会的階級選択の、事実上の岐れ目ともなっちゃってる。今も昔もそうです。
その屈折した心情を余すところなく歌いきった隠れた名曲が、、、あるんです。
題名はズバリ、『僕ら就職コース』(1964年4月発売)。
うははは、いやスゲーな、これ。
テイチク創業30周年記念新人歌手募集で入賞した、その名も石黒高二(いしぐろこうじ)のデビュー盤だそうですよ。
大学生の「金のボタン」はあきらめけど「めそめそしない」「泣かない」と自らを鼓舞鼓吹し、「茜の空」に叫ぶ青春群像。
歌の主人公は進学コースの者達と「いつも席次をあらそった」といいますから、成績に関しては十分進学できるレベルだったのでしょう。それでも就職せざるをえなかった背景・事情に、歌詞はまったく触れておりません。
彼のその後の人生はどうだったのでしょうか。そして石黒高二自身は・・・?
森田公一&トップギャラン『青春時代』。
これが名曲であることは異論のないところでしょう。私の好みじゃありませんがネ。
『僕ら就職コース』が進学組と就職組の分かれる高校二年、つまり卒業2年前の歌だとしたら、この歌の場合は「卒業までの半年」前という時点。しかし「二人がくらした年月」というんですから、常識的に考えれば歌の主人公は大学生でしょう。
……え? あなたは高校で同棲してましたか? ありゃりゃ。
こっちのアナタは中学で家を飛び出して同棲・妊娠・出産、ついでに別れちゃった!?
♪あーそれも青春〜ン、、、って拓郎かいな。
おなじみ、海援隊『贈る言葉』(1979年11月発売)。
一応は、教師が巣立ってゆく生徒たちに贈る言葉、ということでしょう。ただし歌詞は学校という場を離れていかなるシチュエーションにも当てはまる内容となっています。
これとは対照的に、はっきりと教師の立場で卒業していった教え子たちに思いを馳せる内容であるのが、坂上二郎の『学校の先生』(1974年11月1日発売)。
おそらく昭和30年代後半から40年代中ごろにかけての学校(中学校)の雰囲気です。
この歌を聞くと私は涙が止まらなくなります。カタルシスってやつですか。あのころ不幸だった者たちへの、ある意味「鎮魂」の力がこの歌にはあるような気がするのです。
1967年7月10日にミノルフォンより発売された『夏は過ぎても』のB面の『クラスメート』。
歌っているのは「星のぞみ」という育ちのよさそうな、感じのいい女性で、『青春時代』という佳曲を残している人です。(もちろん森田公一のとは同名異曲)
残念ながら『クラスメート』は確信犯的に平凡な楽曲でして、あのころの日本映画の、どこか地方の昼下がりの商店街が映っている“引き”のシーンで、宣伝放送のスピーカーからかすかに流れていれば、それはそれでぴったりかもしれない、と思わせる朦朧(もうろう)感に終始している歌です。
ではなぜここで取り上げたかというと、この歌はA面と兼ね合わせて聞くと、卒業後、約半年立ったころ(夏の終り)に、かつて心を寄せていたクラスメートを、そこはかとなく懐かしむ内容であることが理解されるのでありまして、そこがユーミンの『卒業写真』の世界のいわば予表、予型に相当するんじゃないか、と考えているからです。それだけなんですけどネ。
実は私自身にとっての「卒業ソング」を考えたとき、いちばん最初に思い浮かんだのが岩崎宏美の『二十才前(はたちまえ)』でした。しかし歌詞をチェックしてみるとこの歌は卒業とは何ら関係なく、あえていうなら「年齢がテーマの曲」「成人式ソング」とでも云うべきものでした。
そしてもう1曲、1967年の『いつも心に太陽を』。イギリスの女性ソロシンガー「ルル」がうたった同名映画の主題歌で世界的に大ヒットしました。同じように低所得者層の子弟が通う学校の荒廃ぶりを描いた映画『暴力教室』と、当時よく対比されて語られておりましたね。1995年には続編も作られてます。
近ごろじゃ「卒業」を「大人への仲間入り」とする歌も多いようですが、実際にはなおズレがあるように思えます。卒業は、やはり友との切ない別れであり、学校という桎梏からの解放であり、旅立ちであり、船出でありましょう。
その意味で、私が卒業してゆく若い人に贈りたい一曲はこの歌です。
『出発の歌』
出発と書いて「たびだち」と読ませています。副題は「失われた時を求めて」。
つまり旅行の出発、鹿島立ちではなく、新たな環境、世界への門出を景気づける歌ですね、これは。
『出発の歌』(1971年11月25日 キング発売)は上条恒彦+六文銭のヒットとしてよく知られております。『アクエリアス』っぽい印象の曲だなと、当時は思いましたね。
まぁ、音は
BARKS - FOLK RENAISSANCE : 出発の歌/上条恒彦と六文銭
http://www.barks.jp/listen/?v=1&id=52009955
あたりで聞いていただくとして、
私は若い人にはぜひ広い世界へ飛び出してって大活躍していただきたいので、ここでは外人さんバージョンを挙げておきたいと思います。
マイク・カーブ・コングリゲイションが歌う『出発の歌』(1971年12月 日本コロムビア発売)。「SONG OF DEPARTURE」と英語タイトルが付されておりますが、歌詞は日本語のままです(笑)。
宇宙に、未来に、飛んでゆけ、とうたうこの歌。宇宙に行こうとした かの堀江元社長も、きっと一度は耳にしたことがあるでしょう。
というわけで、あれこれくどくどと申し上げましたが、
今春、いろんな学校を卒業する皆さん、そしてついに卒業できずドロップアウトした皆さん、さらには卒業しそこなって留年した皆さん、
――皆さんの未来に幸多からんことを祈り、私の送辞に代えさせていただきます。礼ッ!
¶postscript―*
Yahoo!ミュージック:卒業ソングの定番といえば?
http://music.yahoo.co.jp/poll/result.php?poll_id=2207&wv=1
2006年02月17日より 計21942票
アーチスト 「曲名」 |
得票率 |
得票数 |
スピッツ「空も飛べるはず」 | 29% |
6332 票
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海援隊「贈る言葉」 | 14% |
2929 票
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ケツメイシ「トモダチ」 | 12% |
2540 票
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森山直太朗「さくら(独唱)」 | 10% |
1990 票
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尾崎豊「卒業」 | 9% |
1868 票
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荒井由実「卒業写真」 | 9% |
1814 票
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Kiroro「Best Friend」 | 8% |
1745 票
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H2O「想い出がいっぱい」 | 7% |
1452 票
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SMAP「世界に一つだけの花」 | 6% |
1111 票
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渡辺美里「卒業」 | 1% |
161 票
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(2006年2月21日)
¶postscript―*
ORICON STYLE ニュース:定番の卒業ソングNo.1は、あの名曲!!
http://news.oricon.co.jp/omr/14558.html
(2006年3月7日)