テレビ朝日の『報道ステーション』が「シリーズ・団塊の世代に捧ぐ!」という企画を始めました。今夜はその第1回目「伝説のグループ “ザ・フォーク・クルセダーズ”の真実」。
その中に貴重な映像がありました。
発売直前に回収処分となった『イムジン河』を3人がテレビ東京(当時:東京12チャンネル)のスタジオセットで歌っているVTR(下2枚の写真はそのキャプチャー画像)、
そしてフォークルとしての最後の出演となった『11PM』(1968年10月17日放送 読売テレビ)。私はこれまで見た記憶がない……たぶん初見です。
私は彼らの歌を聞いて育った世代です。
千歳烏山の病院で血液検査をした帰り、駅前のレコード屋でヒット中だった『帰って来たヨッパライ』のシングル盤を買いました。どこで買ったかなんて、たいていは忘れちゃうもんですけどね、この歌は当時私、好きでしたから。
北山修の著書『戦争を知らない子供たち』(ブロンズ社)を読んだのは、もう少しあとの1972(昭和47)年のことです。
若い人なのにずいぶんと人間洞察が深いンだなぁ、さすがは若者のオピニオン・リーダーと云われるだけのことはある・・・と、感心したのを憶えています。
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(上左)ザ・フォーク・クルセイダーズ『帰って来たヨッパライ』
加藤和彦・北山修・平沼義男によるアマチュア・フォーク・グループ「ザ・フォーク・クルセイダーズ」は解散記念として自主制作盤『ハレンチ』を作ったのですが、大阪のDJがこれを番組で紹介したことによりレコード会社から『帰って来たヨッパライ』がリリースされることになり、急遽、第二期として平沼から端田宣彦にメンバーチェンジし、ザ・フォーク・クルセダーズの名でプロ・デビューすることになったのでした。
(上右)トリオ・ロス・デルフィネス『帰って来たヨッパライ』
トリオ・ロス・パンチョスを代表とするメキシコのラテン音楽トリオは日本でも人気があって、ずいぶんといろんな人たちが来てたみたいですね。哀愁漂うメロディ、レキント・ギターの切ない音色が日本人の嗜好に合っていたのでしょう。
デルフィネスも1964年の日本初公演以来、ひんぱんに訪れています。この「帰って来たヨッパライ」のカバー盤はメキシコ五輪のあった1968年の来日時に録音されたものだそうです。といってもけっして“やっつけ仕事”ではないんですねコレが。
歌詞は日本語原詞のままですが発音はカンペキ、しかも編曲、構成を内容から逸れない形で、彼らなりのスタイルに変えておりまして、フォークル盤とはまた一味違った(日本酒とテキーラの差ですか?)、メキシコの乾いた空気が感じられるテイクに仕上がっています。
(上左)芸術出版:発行 コンパクト盤2枚組『Anti-war FOLK SONG』
これは今となってはひじょうに貴重な録音物ですね。1枚目が東京フォーク・ゲリラによる日比谷野外音楽堂コンサート実況録音(1969年8月21日)。『友よ』『うた』『機動隊ブルース』『栄ちゃんのバラード』。2枚目はサミー高岡とそのグループによるスタジオ録音で『We shall overcome』『俺は一生流れ者』『お父帰れや』『イムジン河』。
『We shall overcome』は漣健児の訳詞を使ってます。編曲は斉藤恒夫が『お父帰れや』『イムジン河』の2曲を担当しています。
つまりこの2枚組は当時のフォークソング・ムーヴメントのアマチュアリズムと商業主義の両断面を見事に記録しているというわけです。
(上右)ザ・フォーシュリーク『リムジン江(ガン)』
企画:大阪労音、制作:ユニオン音楽出版社のレコード。通常のレコード店に並んだのかどうか、ちょっと判りませんね。リリース年の表示がありません。
曲の解説では「フォーク・クルセダーズによって広く紹介されて以来、長い間レコード化が望まれていた曲です。今回、やっと機会を得てレコードとして世に出されるものですが」云々となってます。
A面『リムジン江(イムジン河)』作詞:朴世永、作曲:高宗漢、訳詞:李錦玉、編曲:由良一夫
B面『フンタリヨン(興打鈴)』朝鮮民謡、編曲:由良一夫
歌っているザ・フォーシュリークは紹介文によれば当時「全員早稲田大学在学中で、早稲田大学フォークソングクラブの一員として活躍」していたということです。
さて、『リムジン江(イムジン河)』ですが、わざわざタイトルを直していること、日本語詞は松山猛のものではないこと(ただし一行目の「水清く」は同じ)、水鳥が南の荒れた畑で北の故郷の歌をうたっているというような内容、そしてなによりもレコード化されたということ自体が、総連系の肝入りで作られたことをうかがわせます。
ところで、1980年代前半のある日のこと、某大物TVプロデューサーから『リムジン江』というレコードがあったら貸してくれと電話がかかってきたことがありました。理由を聞いたら、車の番組でリムジンの特集をするそうで、そのBGMでかけたらウケるんじゃないかという話。すでにそのころTV屋の浅薄さに辟易していた私は丁重にお断りしたのでした。
(左)グリーン・フィールズ『イムジン河のほとりで』
1969年9月、日本コロムビア(DENONレーベル)からのリリースです。フォーク調歌謡のヒットに味をしめたレコード会社がデッチ上げた(イヤ失敬!)、『イムジン河』の類似作品で、なかなかの名曲です。さすがプロです。なにしろ作詞は阿久悠、同じテーマなのに、見事に別作品として破綻なく成立させております。私は好きですね。
余談ですが、歌ってるメンバーのプロフィールがジャケットに紹介されていて「現住所」まで載ってます。たとえば昭和30年代、明星・平凡の歌本に大スターの住所が載ってたりしたものですが、いくらなんでも無用心すぎますよ。
ちなみにグリーン・フィールズの前身はカッペーズだったということです。『夜霧のガイコツ今晩は』のザ・カッペーズということでしょうか?
(上左)加藤和彦と北山修『あの素晴らしい愛をもう一度』
当時の私は、親友の結婚の祝いに破局の詩をプレゼントする北山のセンスが腑に落ちなかったのですが、24歳でこういう詩が書けてしまう天賦の才能にいささか嫉妬していたのかもしれません。
(上右)LP『THE FOLK CRUSADERS / FAREWELL CONCERT』
「フォークルさよならコンサート」の実況録音盤(1968年10月・東京公演)です。これを入手したのは十年位前のこと。
端田宣彦が「はしだのりひことシューベルツ」として『サウンド・オブ・サイレンス』と『風』を歌ってます。
(右)ザ・フォーク・クルセダーズ CD『イムジン河』
2002年3月に出たザ・フォーク・クルセダーズの『イムジン河』『悲しくてやりきれない』のカップリングCD。
カラオケもついてます。
(2006年1月21日)
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「パッチギ!」が1位 キネマ旬報ベストテン
映画専門誌「キネマ旬報」は10日、昨年公開された映画のベストテンと各賞を発表した。
日本映画の1位には、京都を舞台に日本人と在日コリアンの若者の青春を描いた井筒和幸監督の「パッチギ!」が選ばれた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060110-00000144-kyodo-ent
井筒監督「パッチギ続編は夏から撮影」
トークショーに登場した井筒監督は「凱旋上映なんて初めて。ありがたいことです」とご機嫌。「続編はやります。個々のキャラクターがその後どうなったか、6、7年後の話です。夏の後半から撮影に入ります。ハードル高いけど、頑張ってつくりたい」とパート2に意欲を燃やした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060123-00000022-spn-ent
この投稿の時点で私はまだ「パッチギ!」を見ておりませんが「イムジン河」が随所に使われているようですね。加藤和彦が音楽を担当しているそうで、どんな感じか興味津々(しんしん)です。
(2006年1月23日)
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『報道ステーション』で紹介されたテレビ東京(当時:東京12チャンネル)収録の『イムジン河』VTRが、今夜のテレビ東京『徳光&コロッケの“名曲の時間です”』(22:00〜22:54)でふたたび放送されました。
(2006年2月20日)