繁華街の代名詞
日本文芸社刊『荷風!』Vol.4 特集「今と昔の“銀座”“有楽町”」』838円+税。
銀座というのは特別な街ですね。ありていに言うと、
商売してる人たちの『格上』意識と、客のそれに迎合するスノッブさが相俟って、今も独特のムードを醸しだしてる街、
という感じです。いや、そればかりじゃない。売る側が裕福な客層に特化した面もあるでしょう。要するにその両方ですな。客を値踏みする商売人の眼力はさすがに銀座、一流は一流を識る、というところでしょうか。
中学・高校時代、私は
テアトル東京、テアトル銀座、並木座、丸の内東宝、有楽シネマ、スバル座、日比谷映画劇場、有楽座、スカラ座、
等々に通いつめたものです。日劇でミュージカルも見ました。ほんとは銀座地球座、銀座名画座にも行きたかったんですけどね、いかにも未成年然とした顔の私は入れてもらえなかった(笑)
夜の銀座は……夜の銀座は今もそういえば、知りませんね。懐具合をすぐに見透かされちゃうような、その程度の人間だからでしょうか。有楽町に近い地域には安い店もあるにはありますが、いつも馴染み客ばかりで敷居が高い。自分の世界じゃないなー、という気がします。
ところで、雑誌『荷風!』が今後も続いていくとしたら、永井荷風に関連する街というのは限られてるでしょうから、その題名は今後はだんだん象徴的な意味合いになっていくんでしょう、きっと。次号は横浜だそうです。
『荷風!』には毎号、ご当地ソングと、その街が舞台となっている映画についての記事が載ります。今号は銀座・有楽町ということなんですが、うちの本棚を探したらこんな本が出てきました。
保田武宏(やすだ・たけひろ)著『銀座はやり歌 1925―1993』(1994年・平凡社刊)。
巻末に『銀座の流行歌一覧』という厖大な量のデータが収録されております。これはかなり凄いんですけど、題名や歌詞に一回でも銀座と出てくるものは全てピックアップしてますので、歌の「“銀座”度」というのが不明なんですね。
たとえば
春日八郎の『東京ウエスタン』のように、ネオン街の代名詞として、銀座の砂漠をひとり行く…みたいな使われ方をしてるのもあれば、
瀬川伸の『銀座ラプソディー』のように、銀座の街そのものをしっとりと歌い上げているものもあるわけで、
一概に銀座のご当地ソングと括っていいものかどうか、という問題があります。
『荷風!』Vol.4でも紹介されているオムニバスCD『銀座浪漫』。レコード会社を超えてコンピレーションされております。マストバイです。