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007 花粉症

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シングル「花粉症」沢田亜矢子 作詞・ちあき哲也、作曲・小笠原寛、編曲・水谷公生、歌・沢田亜矢子。クラウンレコードのPANAMレーベルから1982(昭和57)年のおそらく春ごろにリリースされたものです。
 当時、花粉症は今ほど知られてはいず、蝶やミツバチが花粉を運んでいるような「メルヘンチック」なイメージで捉えられていたようです。そうでなければ、鼻腔がムズムズして鼻水は止まらないわ、目は痒いわ、クシャミはところかまわず連発するわで、ヒジョーにみっともなく、またハタ迷惑なこのビョーキを、オシャレな恋愛ソングに仕立てるわけがありませんから。

 私が花粉症になったのは、たしか1995年ころだったでしょうか。まさか自分がなるとは思わなかった。花粉症だという人をちょっとバカにしてたところもありました。その報いですかね。
 花粉症と水虫とぎっくり腰は同情されない病気だそうです。私は幸い今ンとこ水虫にもインキンにもなっておりませんが、腰痛と花粉症と冬の乾燥肌にはほとほと参ってます。考えてみれば私はいわゆる蒲柳の質(ほりゅうのしつ)で、十代のころはそれを克服しようと、空手やウエイト・リフティングに手を出したこともありました。しかしそれが裏目に出て、ぎっくり腰をやり、それ以来なにかと腰が痛い。……イヤ、愚痴になりました。失敬失敬。

 病名をタイトルにした歌で思い出されるのが、ちかごろCMでパクリ盤や再録盤が使われている、ヒューイ・ピアノ・スミス・アンド・ザ・クラウンズの『ロッキン・ニューモーニア・アンド・ザ・ブギウギ・フルー』=ロック肺炎ブギウギ流感。ヒットしたんで、それじゃということでこの人は『ハイ・ブラッド・プレッシャー』=高血圧、とか『トゥバー・キュ・ルーカス・アンド・ザ・サイナス・ブルース』=肺結核と瘻炎、なんて同工異曲の病気ソングを連発したのでした。

「ロッキン・ニューモーニア・アンド・ザ・ブギウギ・フルー」を含むLP「HAVING A GOOD TIME」Huey Piano Smith & His ClownsLP「FEVER」Little Willie John

 そのほかに、リトル・ウィリー・ジョン『フィーバー』、サント&ジョニーの『スリープ・ウォーク』=夢遊病、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの『便秘のブルース』、ナポレオン14世の『狂ったナポレオン、ヒヒ、ハハ……』、
 あるいはボンゾ・ドッグ・バンドの『Strain』=気ばる、『King of Scurf』=フケの王者、
 日本のではピンキーとキラーズ『風の季節』(総合感冒薬のCMソング)、ザ・リリーズの『高所恐怖症』、伊藤銀次の『日射病』、
――等といったところが思い浮かびます。そもそも恋愛そのものがある種の病(やまい)みたいなものですから、病気と歌は切っても切れない関係、と云えるかもしれませんね。

「スリープ・ウォーク」を含むLP「IN THE STILL OF THE NIGHT」Santo & Johnnyシングル「狂ったナポレオン、ヒヒ、ハハ……」ナポレオン14世

 さて、病気にも軽重があって、「死に至る病」というものは確かにあります。実は歌の世界では「病気」よりも「死」のほうがずっと取り上げやすいのです。1970年ころまで、だったでしょうか、、、恋人や仲間の死をテーマにした「デス・ディスク」というジャンルが、アメリカのヒットソングの世界にありました。

 カントリーやブルースといった民俗音楽では、バラッドの伝統――恋愛・決闘・戦争といった歴史的な伝承譚から、次第にニュースやトピックを扱うようになった――を受け継いでいるせいか〃死〃を突き放した形でドライに歌うということがよくあります。(1965年の西部劇映画『キャット・バルー』に出てきますね。)
 そうした要素がヒットソングの中にじわじわと滲出してきたこと、そして1950年代も半ばに至ると、交通事故や不良少年グループの抗争、さらにはベトナム戦争の拡大などティーンエイジャーの身辺に悲劇的な死が忍び寄るようになってきたこと等により、ティーン向けのポップスにデス・ディスクが多く登場するようになったのです。

 このジャンルでは『デッドマンズ・カーブ』 『エンドレス・スリープ』 『ティーン・エンジェル』 『悲しきインディアン』 『エボニー・アイズ』などが有名です。(クミコの日本語版でヒットした『わが麗しき恋物語』もこのジャンルに入れたいところです)
 ことアメリカにおいてはお国柄でしょうか民族性でしょうか、日本のように『暗い日曜日』や『天国に結ぶ恋』に感化されて自殺や心中をする、みたいな現象はさすがになかったようですが、甘美な悲劇性が若い人の心を摶つのは、洋の東西を問わない、今も昔も変わらぬ人類普遍の現象のようですね。

 またデス・ディスクと云うよりは災害や大事件を歌にした「ニュース・ソング」に近いのですが、亡くなった有名歌手や大統領を讃え偲ぶという歌も外国では珍しくありません。アメリカでは選挙の立候補者が手前味噌なCMソングを作らせることは当り前ですし、それどころか生きているうちに自分の讃歌を作らせる独裁者も世界には大勢いらっしゃいます。自讃だけでなく毀他がセットになるとかなりキナ臭くなってきます。
 戦前の日本では国家のために死ぬことを美化し勧める『特攻隊節』『同期の桜』のような歌が作られましたし、幽霊戦車隊が活躍するというオカルト軍歌『幻の戦車隊』などというものまでありました。
 幻覚を視るということでは60年代のサイケデリック・ロックも「病気ソング」の一端を占めているかもしれませんね。ただし中毒の苦しみそのものを歌っているワケじゃありませんから、しょせんは「ムード」ですが……。

 『愛と死をみつめて』や『ある愛の詩』のような難病+純愛ドラマのテーマソングもヒットしました。
 大島みち子・河野実著『愛と死をみつめて』関連では、そのイメージソングの及川三千代『愛と死のかたみ』(1962年)、日活映画主題歌の吉永小百合『愛と死のテーマ』(1964年)、TBS東芝日曜劇場主題歌の青山和子『愛と死をみつめて』(1964年)が知られております。
 美樹克彦の『花はおそかった』は多分に『江梨子』(橋幸夫)を意識した歌でした。堤大二郎のカバーでリバイバルしましたっけね。

 とは申せ、やはり歌と現実では大違い。近ごろでは死んだ後まで夫と一緒にいたくないなどと嫁ぎ先の墓へ入ることを拒否する主婦が増えたそうで、『骨まで愛して』なんてのは牡丹灯籠なみに古臭くなったということでしょう。

シングル「愛と死をみつめて」青山和子シングル「愛と死のテーマ」吉永小百合
シングル「花はおそかった」美樹克彦シングル「花はおそかった」堤大二郎

 マ、生きてるうちが花です。いづれも様方、病気や怪我にはくれぐれもお気をつけになって下さい。
 微熱(川本真琴)、恋は微熱(網浜直子)、20才の微熱(郷ひろみ)、微熱かな(伊藤麻衣子)……と感じたら、お前にマラリア(沖田浩之)になる前に、セントジェームス病院へ行きましょう。
 走れパトカー(エディとショウメン)と急かしても、D.O.A.=搬入時心肺停止患者(ブラッドロック)となってはオシマイです。
 えっ? リーマンなんでこの春から3割負担ですって? おやマァ、うっかりクシャミも出来ませんねぇ。
(2003年3月5日)

¶postscript―*

都内の花粉飛散、史上最大の恐れ 昨夏猛暑で花芽成長

 東京都は20日、今春のスギとヒノキ科の花粉飛散が「都内で観測史上最大になる恐れがある」との予測を発表、注意を呼び掛けた。
 飛散量が過去3番目に少なかった昨年春と比べて、平均して約21−31倍の飛散が予測されるとしている。
 都福祉保健局によると、大量飛散の原因は、昨年夏の猛暑でスギやヒノキの花の芽が良く成長したため。飛散開始日は昨年並みの2月19−20日ごろとみられている。
 都内9カ所の測定地点での飛散予測数の平均は1平方センチ当たり8378−1万2211個。多かった場合、1985年の観測開始以来最大だった95年を上回る可能性があるという。
 地点別では千代田区で対前年比13・9−18・9倍、八王子市で同47・3−65・1倍などとなっている。
http://www.sankei.co.jp/news/050120/sha086.htm

東京では観測開始が1985年だったんですね。
(2005年1月20日)

¶postscript―*

再び燃える“純愛”の炎…「愛と死をみつめて」 姉妹編、きょう発売

 昭和30年代に出版され、ドラマや映画も大ヒットした往復書簡集「愛と死をみつめて」(大和書房)が純愛ブームで人気再燃。41年ぶりのドラマ化や前作の再放送が相次いで決まった。きょう29日には本の姉妹編「若きいのちの日記」も復刊。「愛と死」人気はさらに熱くなりそう。
(中略)
 その後、本は絶版となったが、純愛ブームの昨年暮れに復刊。7刷を重ね、このほどテレビ朝日での単発ドラマ化、年内放送が決まった。
(中略)
 一方、長らく“秘蔵”されてきたTBSのドラマも、開局50周年記念企画として4月30日正午からCSのTBSチャンネルで再放送されることになった。
(中略)
 ■「若きいのちの日記 愛と死の記録」 39年に出版、「愛と死を…」とともにドラマなどの原作になったみち子さんの日記。「いつでも死ねるように薬を買う」「生きよう 愛する人のために」「また手術台にのせられて」など手紙には書けなかった胸の内が綴られている。
http://www.zakzak.co.jp/gei/2005_03/g2005032913.html

(2005年3月29日)

¶postscript―*

50年前のウイルスを誤送 致死インフルエンザ

 1957年から58年にかけて大流行し、世界で最大400万人が死亡したとされるインフルエンザウイルスのサンプルが、保存していた米国の実験施設から誤って全米と世界17カ国の計6500カ所以上の研究施設などに送られていたことが分かった。13日付の米紙ワシントン・ポストなどが報じた。世界保健機関(WHO)は、研究員らの感染の報告はなく、一般の人が感染する危険性は低いとしている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050413-00000158-kyodo-int

「ロッキン・ニューモーニア・アンド・ザ・ブギウギ・フルー」の正体はこれ?

(2005年4月13日)

¶postscript―*

ドリカム歌う昭和の名曲…青山和子の「愛と死をみつめて」

 人気アーティスト、DREAMS COME TRUEが昭和の名曲「愛と死をみつめて」をカバーすることになった。SMAPの草なぎ剛(31)、広末涼子(25)が主演する3月18、19日放送のテレビ朝日系スペシャルドラマ「愛と死をみつめて」(両日とも後9時)のテーマ曲を歌うもので、あのマコ、甘えてばかりでごめんね…がドリカムバージョンでよみがえる。
(中略)
 「大ヒット曲に見合ったアーティストが必要」という中込卓也プロデューサーの依頼を快諾したドリカムの2人は、「名曲をリメークすることの責任の重大さに身が引き締まりました。リアレンジし歌うことによって、この曲が多くの人に愛されてきた理由を改めて感じました」と話している。同曲の発売予定はなく、2夜限定曲として注目を集めそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060211-00000032-sanspo-ent

ドリカムと「愛と死をみつめて」。かなりミスマッチです。
こういう仕事も受けるということですかね。
(2006年2月11日)

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コメント

広末涼子 裏口入学顛末記
http://ameblo.jp/watanabejuuhan/entry-10008282821.html
からのトラバは、2006年3月18日(金)・19日(土)放送の『愛と死をみつめて』つながりですな。

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