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006 星空に両手を

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シングル「星空に両手を」島倉千代子・守屋浩 作詞・西沢 爽、作曲・神津善行、歌・島倉千代子、守屋浩。
 1963(昭和38)年9月、日本コロムビアのリリースです。
  『いつでも夢を』が市川右太衛門なら、この歌はさしづめ片岡知恵蔵でしょう。あるいは三波春夫と村田英雄とでも申しますか、華やかさではちょっとかないませんけど、その代わり、飽きのこない深い味わい、静かな感動があるんですね。
 デュエットでありながら男性から「あの娘」への一方的な思い入れを歌う『いつでも夢を』とは違って、こちらはプロポーズ直後というか結婚前夜というか、そういうムードで、しかもどちらかの母親がおそらく亡くなっているだろうことを暗示してたりして、未来(行く末)への希望とか心の持ちようだけでなくて、過去(来し方)へのまなざしというものがちゃんとある。今の二人の関係・境遇に加えて、時間という縦軸が二人の人物像に強い陰影と深みを与えている……つまりはこちらのほうがドラマ性が濃厚だというわけです。しかも貧乏で〃指輪の代わりに星明かり〃ってンだから、いぢましいじゃありませんか。それよりもなによりも、メロディが素晴らしい。
 流行歌が人の心をなぐさめ励ます、そういう時代の、宝石のような歌のひとつです。

シングル「咲子さんちょっと」江利チエミ 作曲した神津善行といえば大物有名人の葬儀のVで夫婦そろってコメントする姿が印象的ですが、ひところはタレント活動も盛んに行い、長寿番組『家族そろって歌合戦』のレギュラー審査員をはじめ、TV・ラジオ・CMで活躍、ドラマで演技にもチャレンジしておりましたね。さらにそれらと平行して、音楽イベントのプロデュース、オーケストラの指揮、楽団の理事、公益法人の役員・顧問、古楽器の復興(小楽器集団「六華仙」主宰)、著作活動(『実録ぼくの英才教育』『音楽の落とし物』『浪曲の音楽的考察』『植物と話がしたい』ほか)などにも全力投球していたわけですから、見かけによらずタフな方のようです。
 第一の肩書きである作曲家としては、「海ゆかば」を曲にした信時 潔(のぶとき・きよし)に師事し、交響詩『月山』、小交響詩『依代』、『サカラメンタによるキリシタンの子守唄』、『十八鳴浜の幻想』、『風の中の人』、音楽物語『傷ついた渡り鳥』などを発表。
 歌謡曲や主題歌の方面では、
シングル「大学のお姐ちゃん」中島そのみ中村メイコ『ママ横を向いてて』(1955年)、『夢をみたっけな』
江利チエミ『新妻に捧げる歌』、『サザエさん』、『咲子さんちょっと』、『東京さのさ娘』(写真右上)
中島そのみ『大学のお姐ちゃん』(写真左)
団令子・重山規子・中島そのみ『お姐ちゃんに任しとキ』(写真右下)
美空ひばり『髪』、『小さなクラブ』、『喜びの日の涙』
守屋浩『長いおさげ髪』
倍賞千恵子『明日あなたに』
西郷輝彦『どてらい男(ヤツ)』
植木等『チョッと一言多すぎる』
アントニオ・古賀『朝が泣いている』
常田富士男『私のビートルズ』
テレビ朝日スポーツテーマ『朝日に栄光あれ』
NHKみんなのうた『札幌の空』、『あだ名のうた』
シングル「お姐ちゃんに任しとキ」団・中島・重山――などが知られており、妻=中村メイコの詞、また自作の詞に曲をつけた例もかなりの数に上ります。
(お二人のご結婚は1957年。恋愛時代の恋がたきは永六輔だったと云いますからトリロー文芸部で先輩・後輩の恋の鞘当てがあったということになります。神津は1948年頃から三木鶏郎の編曲を担当しており、1952年初夏から参加した永からすれば先輩に当たるわけです。)
 東宝・松竹を中心とした映画音楽の分野では、松本清張原作の名作『黒い画集 ある遭難』をはじめ、ひばり・チエミ・いづみの三人娘もの、サザエさんシリーズ、お姐ちゃんシリーズ、落語野郎シリーズ、そして社長シリーズ・無責任シリーズのいくつかの作品など、プログラム・ピクチャーを中心として、その多産ぶりを遺憾なく発揮しています。
 というわけで私の神津善行ベスト3ですが、
 (1)星空に両手を
 (2)お姐ちゃんに任しとキ
 (3)私のビートルズ
となっております。
 各社共同企画の神津善行全集がそろそろ作られてしかるべきではないか、と思うのは私だけでしょうか。
(2003年2月1日)

 ¶postscript―*
 『私のビートルズ』は大槻モヨコ(ケンヂ)がボーカルを務める『電車』が1stアルバム『電車トーマソ』(2001年4月)でカバーしています。
(2003年2月5日)

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