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004 若いってすばらしい

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シングル「若いってすばらしい」槇みちる 作詞:安井かずみ、作曲・編曲:宮川泰(ひろし)、歌:槇みちる、発売:1966(昭和41)年3月、ビクター。
 青春歌謡にありがちな、押しつけがましいところや浪花節的なウェットさを微塵も感じさせない、アッケラカンとした詞とメロディ。この明るさは当時としてはちょっと珍しいのではないでしょうか?
 アレンジはデキシー風ですが歌い出しの音使いはイングランド民謡の雰囲気(スローで音をたどってみてください)。なにやらケニー・ボールあたりが演りそうな感じです。『五番街のマリーへ』もそうですが、ご一新以来、唱歌として歌ってきたせいか、日本人はこのテの出だしにヨワいのです。
 この歌より前の10年。すなわち昭和30年代の、日本のプログラム・ピクチャーを見ていきますと「若いっていいわね」とか「いやぁ、若さってのは素晴らしいもんだな」なんてセリフがよく出てきます。古い価値観やしきたりにとらわれない若者たちを、灰色の青春を過ごした戦中派の中年世代がまぶしく感じて、思わずこんな言葉が口をついて出た、といったところでしょうか。東京五輪を挟んで若さへの憧憬が高波のように盛り上がった感がありました。(谷啓の『天下の若者』はズバリ1964年春の放送開始でした。)
シングル「若いってすばらしい」スクールメイツ そしてこの歌の後の10年で、若者は消費文化の主役になってゆくのです。その意味で予祝的青春賛歌であり、また詞の内容からすると、これから世の中で暴れますわヨという宣言だったともいえましょう。
 ビクターの槇みちる盤(上)が1966年、キングのスクール・メイツ盤(右)が1967年。どちらも甲乙つけがたい味があります。この歌をきっかけに私は槇みちるのシングルを何枚か買っていますが、『片想い』以外はこれといった曲がないというのが正直な感想です。
LP「MARISOL」 この歌は当時の、〃日本で人気の外人歌手による自社ヒット逆カバー路線〃に乗せられ、キング(セブンシーズ)ではスペインのマリソル(左)がスペイン語で、ビクター(RCA)ではペギー・マーチ(右下)が完璧な日本語で、カバーしていました。
 また作曲者・宮川泰自身も、宮川泰とニュー・サウンズ名義でアルバム『帰りたくないの(宮川泰作品集)』(東芝音工)に、いわゆる〃歌のない歌謡曲〃として収録しています。
シングル「若いってすばらしい」ペギー・マーチ さて、槇みちるはその後、スタジオ・シンガーとして大活躍し、1970〜80年代にかけて、多くの名作CMソングを残しました。
 トーソー・カーテンレール(川口真作曲)、バスピカ(大野雄二作曲)、オメガ・フィーリング(小六禮次郎作曲)、日本航空・企業編(すぎやまこういち作曲)等々、その数は枚挙に暇がありません。
 1967(昭和42)年暮に公開された東宝映画『日本一の男の中の男』では、平尾昌晃がスクールメイツとおぼしき「メイツガール」なる女の子たちと『若いってすばらしい』を歌うシーンがあります。そのメイツガールの中になんと、久美かおり、大室英美子(のちの白鳥英美子)、平山三紀がいたという話です。
 スクール・メイツに関しては、2002年秋、かつてのLP2枚にボーナストラックを加えたCD2枚が復刻されており、そこに詳細な情報が掲載されていますので、そちらもぜひご参照いただきたいと思います。
(2002年12月2日)

 ¶postscript―*
 ビクター時代の『シュガー・タウンは恋の町』は復刻盤LPで知ったのですが、ベストテイクとも云えるもので、コマソン時代に花開いた、あの透明感のある歌唱を感じさせます。
(2002年12月8日)

 ¶postscript―*
 NHK朝の連続テレビ小説『てるてる家族』の最終回(2004年3月27日)は、出演者全員による『若いってすばらしい』の大合唱で幕を閉じました。
(2004年3月27日)

 ¶postscript―*
 クラウンがリリースしたCD『由美かおる ゴールデン・ベスト』で、『緑の谷間に帰ろうよ』という歌を聴きました。1969年12月に発売された『ラスト・デート』というシングル盤のB面曲だそうです。
 これが『若いってすばらしい』と『受験生ブルース』をまぜこぜにして上から『バンジョーで唄えば』をまぶしたような、そんな感じなんですよね。
(2005年1月29日)

 ¶postscript―*
 2005年大晦日のテレビ東京『生放送!第38回年忘れにっぽんの歌』で槇みちるが登場、『若いってすばらしい』を歌いました。これは非常に珍しいことで、ファンとしては嬉しい限り。

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ちなみに緑川アコも出てて『カスバの女』をクールに歌ってました。
(2005年12月31日)

¶postscript―*

歌手のまきみちるが22日に、フランク・シナトラのレパートリーに挑んだアルバム「マキズ・バック・イン・タウン!」(M&I音楽出版)を出す。エリック宮城オールスター・ビッグバンドを従え、明るく力強い歌声を響かせている。
 「まずシナトラが歌った時の編曲を再現した。さらに彼のたっぷりとしたスイング感を意識した歌唱を心がけ、巨匠への敬意を表した。小粋に軽く歌っているようで、実は高度な歌唱力が必要。シナトラの歌の奥深さを実感しました」
(中略)
4月13日には東京・新橋のヤクルトホールで公演する。 http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/music/news/20060218et02.htm

2006年2月18日の読売記事。
ロイヤルティからすれば、かなり売れなければならないはず。
じゃ私も1枚買わせていただきましょう。
(2006年5月18日)

¶postscript―*
 2006年8月12日放送のMHK『第38回思い出のメロディー』は、出演者全員による『若いってすばらしい』で幕が開きました。
(2006年8月12日)

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