003 ロカビリー剣法
早くも美空ひばりの登場です。左がSP盤の袋。下右が発売当時のSP・EP兼用歌詞カード。下左がその後のシングル盤ジャケット。1958(昭和33)年6月発売で、B面はヒットした『花笠道中』、両面とも米山正夫作詞・作曲の東映映画『花笠若衆』主題歌です。
実在した剣豪に混じって机龍之助が出てくるあたりは時代劇ファンのツボを押さえた詩作で、新納鶴千代が「にが笑い」する例の『侍ニッポン』と連続してかけたいところですね。
五月みどり『お座敷ロック』、雪村いづみ・山田真二『ロックン桜』、ジェームス・三木『初恋ロックン』、仲代達矢『銀座ロックン』、三村和子・万代陽子『ロカビリー三度笠』、弟・小野透の『ボロ船ロック』など、前後に出たあまたのブーム便乗ソングとは違い、本格的なロカビリーに仕上がってます。それもそのはず、バックバンドは堀威夫とスイングウエストで、彼らのみのバージョンもリリースされました。このあたりのセンスは後年『真赤な太陽』でブルコメを起用するところでも発揮されます。
2ヶ月遅れてキングの三橋美智也が『ハートブレイク・ホテル』の日本版『センチメンタル・トーキョー』でロックン調に挑戦しますが、そちらは『東京の花売娘』がブギウギ調だと云えば云えなくもないのと同じ程度の、仕上りでした。
ブギに始まるひばりのリズム歌謡路線から考えればロカビリーの選択は当然だったのかもしれません。しかし実のところロカビリーは、映画『銀座のお姐ちゃん』で描かれているように、愚劣な不良の音楽として〃バカビリー〃などと揶揄される存在でしたから、営業的にはモチベーションが低かったのではないでしょうか。ひばり自身はこの楽曲をどう思っていたんでしょうね?
日本コロムビアでは1962年までSPを発売していましたが、1958年は各社とも実質SP・EPの転換期で、新譜のほとんどが同時発売でした。SP最晩年ともいえるこの時期、ものすごくキッチュなコミックソングが多数でていますが、それは稿を改めてご紹介しましょう。
(2002年11月2日)