チョッパーがいかなるものか、先月号の記事でおおよそはお分かりいただけたと思います。
 リッチー・バレンスの伝記映画『ラ・バンバ』(’87)では1958年という時代設定でチョッパーが登場します。実際、チョッパーは1950年代後半に西海岸でそのスタイリングが完成していたのですが、恣意的で違法な改造車として、ハーレーダビッドソン社や警察に睨まれていたそうです。
 60年代に入り、ロック・ミュージックと同様に、既成概念や社会常識に対する痛烈なアンチテーゼが籠められたサブカルチャーのアイテムとして認知されるようになり、時代が降(くだ)るにしたがって、やがて商業主義に取り込まれファッションに成り果ててしまった、そういう現象でした。

 さて、今月はチョッパーの直接的影響によって生まれたハイライザーというものをご紹介したいと思います。 ハイライザーはチョッパーの自転車版で、チョッパーのスタイリングをそのまま踏襲しています。おそらくはチョッパーに対する単純な憧れが製作の動機だったのでしょう。下の写真のものは如何にも町の溶接屋にでも頼んで作った「手作り」といったかんじのもので、ハイライザーの原点を感じさせます。

 アメリカではハイライザーは1960年代中期にメーカーが商品化し(Schwinn社Stingray、Sears社Spyder、Raleigh社Chopperなど)、60年代後半には大型スーパーや通販で簡単に買えるようになっていました。当時の映画を見ると、子供はたいていこの型の自転車に乗っていますから、かなり売れたものと思われます。(『ジュマンジ』の冒頭1969年の場面にも出てきます)
 ハンドルに握りの部分が高い位置にあること(=ハイライザー)、エイプハンガー(Ape hanger)といわれる柄の長いハンドル(日本ではイーグルハンドルと称された)、バナナシート(banana seat)と呼ばれる長いサドル、それを後ろで支えなおかつ背もたれのように伸びているシーシーバー(Sissy Bar、バイクではC.C. Bar)、車のシフトレバーを模した変速レバーなどが特徴で、明らかにチョッパーバイクをイメージしたものでした。

 そのころ日本ではセミドロップやドロップハンドルの多段変速のものが子供向けの主流で、メーカーのハイライザー型への対応はほとんどありませんでした。