Smile – written by Charlie Chaplin(Cover)
わざと荒れた画質にしている映像です。私は16ミリで撮影したモノクロ・フィルムを35ミリにブローアップした内田吐夢のあの『飢餓海峡』を連想しましたよ。
NHKスペシャル『マネー資本主義』の第1回『“暴走”はなぜ止められなかったのか ~アメリカ投資銀行の興亡~』(2009/04/19 21:00~21:50放送)を見ました。シリーズのテーマ曲として映画『モダン・タイムス』の名曲『スマイル(Smile)』が使われております。細野晴臣によるアレンジで大変素晴らしい仕上がりになってました。
映像とは正反対の美しい音楽、あるいはのどかな状況音を使うという手法では、黒沢明の『野良犬』の緊迫したラスト・シークエンスが真っ先に思い浮かびます。犯人との対決シーンで聞こえてくるのはクーラウのピアノ練習曲『ソナチネ第1巻・第1曲』。ついに捕まえた後、土手の上を通りがかった子供らが歌っていたのは童謡『蝶々』でした。
『マネー資本主義』でも貪欲なウォール街がもたらした世界規模の人災を解明しレポートするに当たり、テーマ曲として、あの切ないまでに美しい旋律をもってきたという、プロデューサーのそのセンスには私は脱帽するばかりです。そして言わずもがなですがチャップリンが描いた資本主義社会の本質と悲劇を今にちの状況に重ね合わせるという多重露光としての意図をも示す選曲ですね。
チャップリンの作ったこのインストゥルメンタル曲『スマイル』を、ナット・キング・コールがJohn TurnerとGeoffrey Parsonsの詞を得てヒットさせたのは1954年9月です。映画が1936年ですからその間わずか18年。
上にシェアしたYouTubeのテイクは、あるいはリッキー・リー・ジョーンズの2000年のアルバムに収録されたギター爪弾きバージョンに影響されてるかもしれません。
ナット・キング・コールの『スマイル』が、アンディ・ウィリアムスの『ムーン・リバー』だとすれば、リッキー・リー・ジョーンズやこのYouTubeのテイクは、映画の中でオードリーが披露した『ムーン・リバー』に相当するものでしょう。
『スマイル』はバーブラ・ストライサンド、ダイアナ・ロス、サンディ・ショウなども歌っておりますね。ただこの歌は圧倒的な熱唱とかゴージャスなアレンジとか粋なジャズムードとかは相応しくないでしょう。なにかこう本来無一物の境地といいますか、すべてを失い絶望の淵に立ちてなお眼前に君の笑みありというか、『街の灯』ラストの指噛みながらの拈華微笑(ねんげみしょう)というか、そんな達観した心持ちで歌うのがよろしい。そういう歌です。
Barbra Streisand & Tony Bennett – Smile
Michael Jackson – Smile
Rickie Lee Jones – Smile
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