ボンボコ・ボンボコ・ダン・ディキ・ダン・ダン

2月15日深夜に放映された、エディ・マーフィ主演の映画『プルート・ナッシュ』THE ADVENTURES OF PLUTO NASH(2002年)を見ました。初見です。
SFコメディだからというだけで内容も知らずにとりあえず録画しておいたものです。
冒頭、『狼男アメリカン』AN AMERICAN WEREWOLF IN LONDON最末尾のスタッフロールでも使われていたザ・マーセルズの『ブルームーン』がいきなり流れたのでちょっと驚きました。今でもアメリカ映画のタイトルバックでオールディーズが使われることがよくありますが、このケースではオリジナル音源をブツ切りにし、新録音のラップを乗っけているのです。
編曲と歌唱者マーセルズのコーラス・ワークの独自性がロジャース/ハートの権利ほどには尊重されなかったということでしょうかねぇ。
古い音源を完全に素材扱いする、かかるオーバーダビング作品――あえてoverproduced drivel (屋上屋を重ねた愚作)と言わせてもらいましょう――は90年代後半から相当数作られてますが、このドゥーワップの名曲までが「餌食」にされていたとは、あたしゃちーとも知らなんだ。
『プルート・ナッシュ』では『ブルームーン』のほかにも月をテーマにした有名曲がでてきます。
調べたら向こうでもサントラ盤は発売されなかったみたいです。リリースできなかった理由はやはり権利関係でしょう。

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(上)1979年にEmusレコードがリイシューしたマーセルズのコルピックスでのオリジナル・アルバム『BLUE MOON / THE MARCELS』。プロデュースはSTU PHILLIPS、アレンジはBERT KEYESが担当しました。
『ブルームーン』ヒット直後の録音ですから、これもまたシャ・ナ・ナ御用達の名曲『心の傷あと』HEARTACHESは収録されておりません。
79年ころにはすでにもう外盤が日本で簡単に入手できるようになっていて、私もこのリイシュー盤を発売から半年くらい経ってから新宿の輸入レコード店で買ったという記憶があります。

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(上)マーセルズのメンバー。
右からリードボーカルのコーネリアス・ハープ、
第2テナーのジーン・J・ブリッカー、
バリトンのディック・ナウス(リチャード・F・ナウス)
バスのフレッド・ジョンソン、
そして左端が第1テナーのロナルド・“ビンゴ”・ムンディです。
見てのとおり、黒人白人混成グループで、いかにも60年代初頭のドゥーワップ・リバイバルで活躍した感じです。

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(上)別ポーズ。
『ブルームーン』は1961年2月の彼らのファーストヒットで、1963年ジョニー・シンバル『ミスター・ベースマン』はマーセルズ盤へのリスペクトというか賛歌ですね。
翌1964年には早くもザ・ホリー・モーダル・ラウンダーズの『ミスター・スペースマン』のような解釈が登場するという、激動の時代でした。

以下余談ですが、月、ザ・ホリー・モーダル・ラウンダーズ繋がりで、こういう映画もあります。

映画「パパにさよならできるまで」公式サイト

 

禁じられた歌

田 月仙「禁じられた歌」中公新書クラレ269 田 月仙(チョン・ウォルソン)著『禁じられた歌 朝鮮半島 音楽百年史』820円+税
2月10日発行の新刊書。
朝鮮半島の国家群は独自の文化を持ちながらも、古くは大陸の巨大国家、近くは大日本帝国に脅かされ、さらには朝鮮戦争、軍事独裁政権の圧政等々、寧日なき歴史が続いてきたせいか、なかなか世界に知られるということがなかったように思います。
それがようやくソウル五輪のころから改善されはじめ、今では食品、映画、歌、文学などさまざまな分野において、韓国の文化が広く認知され、受け容れられるまでになりました。

その朝鮮・韓国文化に関して興味のある事柄といえば、私は音楽、とくに流行歌ですね。
歌えと強制される歌、歌うなと禁止される歌、それでも権力の目を盗んでひそかに歌われる歌、どこがいいのかわからないのに大流行する歌、何百年も歌い継がれる歌、時代を象徴する歌、猥褻な歌、楽しくなる歌、勇気が出る歌、泣ける歌、そして自分が大好きな歌――
歌にもいろいろありますが、たかが歌されども歌、歌で世の中が変わるわけではないのに、一つの歌で生き方が決まることもあります。まったく歌というのは不思議なもんです。

韓国では戦後それまでの反動で、日本の歌、日本的な歌が禁じられてきました。これは戦前日本の敵性音楽禁止と同じ手法です。なぜ恨み骨髄の日帝軍国主義者のマネをするのか理解に苦しみますが、裏を返せば、容易に流行し日本への敵愾心を失わせるに十分のものであることを認めていたともいえるのではないでしょうか。
ノ・ムヒョン政権の親日派糾弾も、中国や朝鮮の王朝交代時に必ず起きる前権力の事績の全否定、外敵への怒りや憎しみを煽るあざとい人心掌握術・民心収攬策の側面が全くないと言えるのか、私ははなはだ疑問です。自分に落ち度はない、私たちは正しい、我々は偉大なる民族である、などといううぬぼれ意識があるうちは日本と五十歩百歩でしょうね。
近年の韓流ブームと、そのことを日本人が「韓国の文化侵略である」などと誰も言わないことを知って、韓国民は少し拍子抜けしてるかもしれません。

『禁じられた歌 朝鮮半島 音楽百年史』では、韓国で広く知られている日本の流行歌についても触れられています。
意外な曲がかつて「流行」してたんですね。私は初めて知りました。

筆者 田 月仙(チョン・ウォルソン)さんの公式サイト
soprano Chon Wolson

 

追加記事

作詩・作曲:遠藤 実、歌:三船和子の『他人船』(1965年)は、前年 韓国でヒットした李美子の『椿娘』に啓発された部分があったのではないか、という気がします。

동백아가씨 – 이미자

(2010年8月20日)